お兄ちゃん。どうか私を愛して下さい
「今日、帰り遅くなるかも」

「そうなのか?珍しいな、お前が遅くなるなんて」

「うん、ちょっとね。久しぶりに会う友達だから話盛り上がるかもしれないし」

そっか、と兄は頷き楽しんでおいで、と微笑みかける。
兄が作った朝ごはんが食卓に並べられる。
目玉焼きにソーセージ。サラダに、ご飯。
バランスのいいそれがそこには用意されていた。

「いただきます」
と言うとお兄ちゃんはいつも嬉しそうに召し上がれ、と言って私の食べる姿をにこにこしながら見つめる。


何も変わらない。

何の変哲もないこの空間。

そう、そんな空間がずっと続けばいいのに。

そう、思っていた。

でも...


“あの日" の玄関先で変わってしまった。


私の中で、何が音も立てず静かに崩れ去っていくのを、確かに私は、感じたんだ。
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