桜の木の下で
「ねぇねぇ、葉月ちゃんさ~」
「何ですか?」
「最近、大人っぽくなったんじゃない?」
「本当ですか?」
「うん。
でも私は前の葉月ちゃんのほうが好きだったなぁ。
なんか無理して背伸びしてる気がする。
自然体でいいのに……。
人懐っこくて可愛い。
そんな葉月ちゃん、好きだけどなぁ」
「……。そんなこと分かってるんです。
自分が無理してることくらい。
でも、大人の女性にならないといけないんです」
「なんで?」

佐藤先輩は驚いてる。

「そ、それは……」
「あっ、分かった。あの桜の木の人ね」
「……。桜の木の人?」
「前に言ってたじゃない。
桜の木の下で会った男性が好きだって……」
「あ~、はい。言ってましたね」

佐藤先輩は、
その桜の木の人が菅田さんだって知らないんだ。

「その人と会ったの?それとも?」

ニヤついた顔で私を見た。

「なっ、何ですか?」
「まぁ、とにかく無理しないでね。
葉月には、葉月ちゃんの魅力があるんだから」

ポンポンっと、肩をたたかれ
自分のディスクに戻って行ってしまった。

背伸びかぁ…………。
やっぱり私。
無理してるのかな~。
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