愛逢月にレモネードを。


「七夕伝説って知ってるだろ?」

「さっき、生徒会長から聞いた」

「その中に出てくる唯一の悪役」

「悪役?」



七夕伝説に悪役なんていたっけ?



「まぁ世間一般では根っからの悪役だとは思われてねぇんだろうけど。」

「どういうこと?天津くんの前世はなんなの?」

「…織姫と彦星を引き離した奴」



織姫と彦星を…引き離した…


まさか…



「天…帝…?」



恐る恐る聞くと、彼はコクンと頷いた。

どうしてこんなに呆気なく教えてくれるんだろう。


……朝言ってた、"話しても絶対信じねぇ"事もこの話ってこと…か。



「お前まだ転入初日だろ。今日は帰れよ」

「え?!ちょっと、話まだ終わってない」

「なら俺が帰る。」



前世が天帝ってことだけ聞いて帰れと?!



「教えてよ前世の話!!」

「嫌だね」

「どうして?!」

「…お前が前世を思い出したら話してやるよ」



私の前世……。



「私の前世も知っているの?」

「ああ。もちろん。」

「……織姫…なの?」

「自分で思い出せよそれくらい。じゃあな。」



そう言って、天津くんは本当に帰ってしまった。

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