愛逢月にレモネードを。


先に天津くんが教室に入ると、一瞬教室内が異色のざわめきに包まれた。


『きたよ御門くん…』
『今日も怖い…』
『なんで学校なんか来てるんだろうね…』


その声の殆どは天津くんを恐れるもので、当の本人は気にも止めていない様子だった。


私も、正直天津くんの第一印象は怖い人だったけど。

そんなに怖い人じゃないんだよなぁ…なんて、ほんのちょっと彼を気の毒に思いながら


私も教室入ったその瞬間だった。


再び、また別のざわめきが起こる。


『なんで転校生の子が御門くんと?!』
『え、あの二人どういう関係?』
『そういえば御門くん、あの子のこと知ってたよね』
『もしかして付き合ってるとか?』


いやいや。そんなわけないでしょどう見ても。


心の中で苦笑しながら席に座ろうとすると、ある言葉が聞こえた。



『もしかしてあの子、御門くんにいじめられてるとか?』



本人はコソッと言ったつもりだったんだろうが、私と天津くんにはしっかり聞こえてしまっていて。

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