†戦慄の交響曲†
沙羅の歌は風に乗って何処までも響き渡っていた。


雨がいつの間にか止んで・・・青空が覗いていた。


―これで・・・悠里も正気を取り戻しただろう・・・



そう、思ったが沙羅は腹部を押さえた。



傷口が開いてきたのだ。



まぁ、あれだけ走ったりしたんだから・・・仕方が無いですんだらいいが・・・



沙羅の手を真紅に染める、自らの血。



「やべぇな・・・」



沙羅は今、頼れるものが無い。


霊力も殆ど残ってない。


沙羅は倒れるように、木にもたれかかる。



「ったくよ・・・私も・・・弱くなったな・・・
元々、弱かったけど。ここまでいった事は無いな・・・」



血が沙羅の横腹伝い落ちる。



「身が朽ち果てる前に・・・逝きそう・・・」


なんとも、縁起でも無い事を言う沙羅。



「まぁ・・・死んだら同じかぁ」


くくく、と笑って蒼く澄んでいる空を見上げた。



「・・・神殿も・・・聖域に戻ったし・・・良かった
無理し過ぎたかな・・・」



沙羅の周りを、風の精霊や炎の精霊、地の精霊に水の精霊が飛ぶ。


「大丈夫だよ。黒月を持っている間は死ぬ気がしないからね」


精霊に笑いかけて・・・眠る様に目を閉じた。


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