世界最後の朝を君と
「でも、どうしてOKしてくれたんですか?」

私はふと気になり、女子生徒に聞く。 

女子生徒は「んー…」と人差し指を顎に当てる。

「…センパイ面白いから、遊び甲斐あるし。あと餅ネコ好きに悪い人はいないと思ってますし」
「今『遊ぶ』って聞こえたんだけど…」
「それに…」

女子生徒と目が合う。

初めてしっかりと顔を見た気がする。

髪が顔にかかっていてよく見えなかったが、少し吊り気味の丸い瞳と、筋の通った鼻、小さめの唇。

みな美とは対象的な、少しボーイッシュで中性的な顔立ちだが、長いまつ毛や白い肌は女の子らしくて、とても可愛らしい。

「初対面で、私とこんなに話してくれたの、センパイが初めてだから」

女子生徒は少し口角を上げる。

「じゃ、じゃあ、私と友達になってくれませんか!?」

私は思わずそう聞いてしまった。

「いや、それは嫌です」

女子生徒はスンッと真顔に戻る。

「そうだよね、急に友達とか、変だよね、ごめんなさい…」

何だか急に恥ずかしくなり、頭をぽりぽりと掻く。

調子に乗りすぎた。みな美と黒山君以外の友達が出来るんじゃないかって期待していた私が馬鹿だった。

「…ショウジ」
「障子?」

突然、女子生徒がボソッと呟く。

「…東海林未来(しょうじみらい)。センパイの名前は?」

私が顔を上げると、彼女は顔をりんごの様に真っ赤にして、目線を逸らしていた。

「た、立花咲希です!」
「…咲希センパイ。あの、敬語止めてくれませんか? 私、後輩なんですけど」
「そっか、そうだよね。でも、未来ちゃんも、敬語使わなくていいよ」

未来ちゃんは「え?」と私の顔を不思議そうに見つめる。

「何ていうか…敬語使われるの、ムズムズするっていうか、私、敬語使われる様な人間でも無いし」
「何それ…変なの」
「それに」

私は未来ちゃんの手を取り、しっかりと握る。

「いつか、友達になりたいって、本気で思ってるから」

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