世界最後の朝を君と
4 猛暑日
「あっっっっつ!!」

私はそう叫んで天を仰ぐ。

幽霊の店長が現れて二ヶ月が経過した。

七月の中旬。

昼食後の昼休み。

私と未来ちゃんと店長は、ブレークルームに集合していた。

日中の気温は35℃まで上がり、動いていなくても毛穴という毛穴から汗が吹き出る。

「ていうか、何でクーラーつけねえんだよ」

一人だけ涼し気な顔の店長は、部屋の端にあるエアコンを指差す。

どうやら幽霊に痛感はあっても冷感温感は無いみたいだ。

「…ぶっ壊れてる、それ。この学校貧乏だから、先に教室のクーラー修理代に使われて…ブレークルームは後回し…」

そう説明する未来ちゃんちゃんに至っては、死体の様に机に突っ伏したまま、ピクリとも動かない。

「…未来ちゃん、生きてる?」

私は持っていたうちわで未来ちゃんに送風する。

未来ちゃんはムクリと起き上がったかと思うと、ゴンと音を立てて額を机にぶつける。

そして、そのまま首をひねり、こちらに顔を向ける。

その額は汗でぺっとりと前髪がくっついている。

「…もう無理、センパイ、アイス買ってきて」
「えー…外出たくない…」

私がチラリと窓の外を見ると、未来ちゃんはあからさまに表情を曇らせる。

そして、私と店長の顔を交互に眺める。

「…ていうか、何で二人ともここにいるの…?」
「あ、そうだ。忘れてた。店長が話したい事があるって」

そう。

何故わざわざこの暑苦しいブレークルームに集まっているのかと言うと。

「そうだ。俺の懸命な調査により、犯人候補を更に絞る事に成功した!」

店長は鼻高々に胸を張る。

私は思わず立ち上がる。

「本当ですか!」
「ああ。それもだいぶ絞れたからな。これである程度犯人の目処がつくな」
「…それで、どんな人なの」

未来ちゃんも上体を起こす。

「それはだな…ほら、もっとこっち寄れ」

店長は身をかがめ、私と未来ちゃんに手招きする。

「…ちょっと、暑いのに何でこんな近づかなきゃいけないの」

肩を組もうとする店長に虫でも見る様な目を向ける未来ちゃん。

「馬鹿。犯人に聞かれてたらどーすんだ。こう言う秘密情報の交換は綿密に行うモンだろ」
「…刑事ドラマの観すぎですね」

私はため息をつき、しゃがんで店長に身を寄せる。

「一回しか言わねえからな。いいか、よーく聞けよ。ちゃんと…」
「早く言って」

未来ちゃんは店長を睨みつける。

「……いいか、何と、犯人は…」

店長はその言葉を口にする。
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