亡いものねだり
幻想
僕と穂香は、広場の脇の森の中に入り一目散に走った。


絶対に人目がないところまで逃げると、息を切らしている穂香の顔を覗き込む。


「大丈夫? 随分走ったから」

「ハァ……ハァ……私はこの程度大丈夫……!」



強がりながら顔を上げた彼女の顔は上気して薄く紅潮していて……先ほどとはまた違う表情に僕は思わずドキッとする。


「ごめんね。僕が意地悪したせいで騒ぎになっちゃって……正直、やり過ぎた」

「私こそムキになってごめん。せっかくのお祭りなのにこれじゃ台無しだよね」

「いや、そんなことないよ。むしろ最高だ」

「……え?」



すっかり落ち込んでいた穂香は僕の言葉に目を見開き、そして初めて川のせせらぎに気づいて辺りを見渡した。


森の中を走るうち、僕たちは偶然小川に差し掛かっていた。


そしてそこを中心に、辺りを無数の光が飛び交っていたのだ。


「綺麗……」
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