ストーカー
同時に崩れ落ちるあたしと、逃げていく郁。


背中が生暖かな血液で濡れて行き、防犯ブザーを押そうとした手から力が抜ける。


やがて通行人の誰かが気が付き、声をかけてきた。


その声に返事をすることもできない。


全身が寒くて寒くて仕方がなかった。


遠くで救急車の音が聞こえてくる中、あたしは不意にほほ笑んだ。


あたし、今、なにも、怖く、ないや……。


ようやく手に入れた安堵は、永遠に続く眠りだった。




END

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