運命ノ黒イ糸
もちろん、この糸が見えていないことは知っている。


「運命の王子様って、大田君じゃなかったの?」


大田君の名前にあたしは大きくため息を吐き出した。


「違ったんだよ。大田君じゃなかったの」


「なにそれ。あんなに仲良くしてたのに、ちょっとヒドクない?」


佐恵子の言葉にあたしは瞬きを繰り返した。


佐恵子から見れば、あたしが複数の男の子にいい顔をしているように見えるのだろう。


でも違う。


これは運命の相手を探すために必要なことなんだ。


「大丈夫だよ。大田君も理解してくれてるから」


糸を切った時点で、大田君はあたしに興味を失っている。


現に、毎日来ていたメッセージは送られてきていない。
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