無自覚片思いの相手は策士な肉食系でした
男は小型カメラと荷物と一緒に堀原と事務所に連れられていった。

「いやー、さすが真未、男前だわ。
まさか背負い投げから間接技入ると思わなかった」

「まあ、咄嗟にね」

「咄嗟で普通できないでしょ。
それに啖呵切ってるのも、俺のこと信頼してるって宣言してるのもグッと来た」

ますます惚れ直した。と笑いかける朝陽に真未も笑いかける。

「あの時、二年前の朝陽を思い出したのよ。
路地裏で男の人達に強気に笑ってた朝陽を……大事な人を護るってこんな気持ちなんだってよくわかったわ」

そう言って微笑む真未に朝陽は思わず抱き締めようとしたが、あっ!と真未は突き飛ばしてしまった陽菜のことを思い出してパッと朝陽から離れて陽菜に謝ろうとしたところで固まってしまっていた。

突き飛ばした拍子に眼鏡とカツラが外れてしまって、そこにいたのはいつも見慣れている陽菜ではなく、大ファンの“陽菜ちゃん”がそこにいたのだった。

「え?陽菜ちゃん!?え、陽菜さん……ええっ!?」

「ま、真未ちゃん、黙っててごめんね?」

「あーあ、もっと黙ってるつもりだったのになー」

「朝陽っ!陽菜さんが陽菜ちゃんなんだけど!?」

「うん、知ってる。
だから少し落ち着こう?」

朝陽は掴みかかる真未の両肩をポンポンと叩き落ち着かせようとしてくるが、落ち着いてなどいられなかった。
名前も一緒で、雰囲気も似てるって自分でも言っていたのに何で気づかなかったのかと自分で自分を叱り飛ばしたい衝動に駆られていた。
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