無自覚片思いの相手は策士な肉食系でした
家に帰ると真未はすぐにCDをかけてテーブルに置いていた雑誌を手にベッドに座る。
ワンフロアの部屋は広すぎず狭すぎず、最低限の家具だけ置いているから思いの外すっきりしていて過ごしやすい。

イヤホンでもいつも聞いているKaiserの曲を聞きながらお気に入りのモデルが載っている雑誌を開くと、栗色のミディアムヘアで印象的なくっきり二重の大きい瞳の女性が穏やかな表情でカフェオレを飲んでいる写真が目に入った。

越名陽菜(こしな ひな)。
二年前にたまたま見た雑誌の『街角で出会った次世代モデル』というページの中にいた一人で、読者からの投票で1位を獲得した人がモデルデビューするという特集記事にいた人だった。
一目見たときから何故か惹き付けられて無性に応援したくなり、彼女に投票したら見事一位に輝いて瞬く間に人気モデルになった時にはひっそりと喜んだ。

それからずっとファンだった彼女が同じくファンだったKaiserの一人と結婚したのだから、さらに感慨深いものがある。

「なんとなく、誰かに似てる気もするんだけど……」

呟いて雑誌を開いたまま横に置くと、近くにあった鞄をあさってさっき手に入れたばかりのCDの予約表を手に取った。
一週間後の新曲CDも楽しみだけれど、朝陽とシェアする約束も楽しみだ。
ふふっと予約表を口元に当てて笑うと、真未はそのままベッドに寝転んだ。
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