無自覚片思いの相手は策士な肉食系でした
一瞬、やばいと思って周りに誰かいないか見回した。
普段滅多に満面の笑みを見せない人が笑うとこんなに破壊力があるのだと知り、せっかく美人すぎて近寄りがたいって言われているのにこんな笑顔を見られたら、いらない虫がわんさか寄ってくるじゃないかと思った。

「今度私のおすすめも何か持ってくるね。
何がいいかな?」

「別にいいよ、俺が勝手に持ってきただけだし」

「秋村君と一緒で私も借りは返さないと気がすまないタイプなの。
どうしようかなー」

パンが入った紙袋を見たまま首を傾げる真未を見下ろしながら小さく笑う。

そうやって、小さなことでも必死に俺のことを考えていたらいい。
その分だけ彼女の時間を独占できていることになるんだから……。

「駄目だ、すぐに思いつかない。
何かいいお返し考えとくから待っといてくれる?」

「わかった、ゆっくり考えといて。
まあ、その間におすすめのパンが増えてるかもしれないけど」

「それは……早く返すものを考えないといけないね」

そう言って苦笑する真未に微笑むと、それぞれの教室に向かって歩き出した。
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