無自覚片思いの相手は策士な肉食系でした
「……どういうつもり?」

「何が?」

わかっているのにわからないふりをして真未を見下ろすと、真未は元々つり目の目をさらにつり上げて怒っているような顔をしていた。

「秋村君、彼氏じゃないでしょ。
なんでそんな嘘をつくの」

「んー?否定するのもあれだしさ、まぁ、いいじゃん?」

「よくないでしょ。
そんな適当なこと言ってたら本当の彼女に……」

そこまで言いかけて、真未は途中で口に手を当てて気まずそうな顔をした。
先日、教室で彼女はいないと言ったのを何やら変に気遣っているのであろう様子に朝陽は苦笑する。

「と、とにかく、適当なこと言わないでよね!」

「適当なこと言ったつもりはないんだけど」

「秋村君にそのつもりはなくても、しっかり言ってたわよ。
誤解されるようなこと言ったりとか、名前呼び捨てにしたりとか……」

「あ、そうそう、そのことなんだけどさ」

人差し指をピッと立てた朝陽に真未は眉を潜めたまま見上げると、朝陽はニッと笑ってみせた。

「ここまで仲良くなったんだし、秋村君じゃなくて朝陽でいいよ。
俺も真未って呼ぶし」

「いや、何でそんないきなり……」

「俺、名字で呼ばれるの慣れてないし、逆に呼ぶのも違和感あるんだよね。
はい、決まり!じゃあ、帰ろうか」

「ちょっと……もうっ!」

真未の言葉をあえて聞かずに勝手に歩き出すと真未が後ろからついてくる。
今日の目的を達成した朝陽の足取りはすこぶる軽かった。
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