二人は今日も猫をかぶる
「恭も光も遅いよ、また5分遅れ。」
腕時計を見ながら、不服そうな春海。
「ゴメン春、また僕が寝坊しちゃって。こーちゃんは悪くないんだ。僕のせいなんだよ、ゴメンね?」
春海に突進するように抱きついて、くりくりした目で見つめる恭ちゃん。そんな目で見られたら、誰もが許してしまうと私は思う。まあ、春海と待ち合わせをしているわけではないけど。
「あーわかったわかった。それにしても、光は恭みたいな奴のお世話で大変だな。たまには自立させる訓練でもしたらどう?」
「本当、ちょっとは成長してほしいよ。恭の世話すんの、大変なんだから。」
春海にのっかって、恭ちゃんをちょっと馬鹿にする。嘘。本当は成長なんてしないで、ずっとこのままの可愛い恭ちゃんでいてほしい。
「ゴメンこーちゃん、見捨てないで!僕ちゃんと成長するから、ねーだからお願い、こーちゃーん。」
泣きつく恭ちゃん。急に来たから、心臓の準備がまだ。ちょっと待ってよ、可愛すぎ…
「あーはいはい。ちゃんと成長しなね。」
内心穏やかじゃない。朝から抱きつかれるなんて想像できないよ。
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