独占欲強めの部長に溺愛されてます

加賀美にやきとり屋でごちそうになったのは、先週の金曜日。プライベートナンバーは教えてもらっていたが、さすがに電話をかけてお礼を言う勇気はなかった。

加賀美にキスされる夢を見たせいか、必要以上にドキドキする。


「楽しかったよ」
「あ、はい……」


そう言われるとわけもなく恥ずかしい。しかも優しい声は反則ではないか。おかげで野々花の心臓がトクンと跳ねた。

電車が揺れるたびに加賀美の身体が背中に触れるからたまらない。逞しい胸板だな、なんて考える自分はやはり変態チックだと落ち込む。

ただ、加賀美が腕を突っ張って野々花にスペースを作ってくれているおかげで、さっきより体勢がずっと楽になった。両腕が野々花の両脇から伸ばされ、まるで守られているような気になる。

(……だから、私ってば! 守られてるわけじゃないって。揺れに任せて私にべったり身体を押しつけたりして、あとでセクハラ!と言われるのを避けるために決まってるじゃない。……ま、それは言い過ぎとしても、べつに私だからどうこうじゃなく、部下をラッシュから守ろうという部長の多大なる心が成せる技なのよ)

部下が悩んでいるのを放っておけないと言っていた加賀美を思い出した。

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