希望の夢路
僕は、彼女を探した。彼女は、すぐに見つかった。彼女は、カフェにいた。
大きなガラス窓の近くで遠くを見つめる彼女は、
心なしか悲しい目をしているように見えた。
僕は彼女に駆け寄り、静かに後ろから抱き締めた。
「こーこーあちゃん」
返事がない。僕は、彼女の顔を覗き込んだ。
「ねえ、心愛ちゃん」
「なに?」
「だめだろ?勝手に僕から離れちゃ」
「いいでしょ、別に」
「なに拗ねてるんだよ」
「拗ねてないもん」
「拗ねてる」
「拗ねてないってば!」
彼女の透き通った声がカフェに響いた。
「なんだよ、可愛くないな」
彼女は、明らかに傷ついた顔をした。
「私は他の女みたく可愛くないもん。そういうの求められても困る」
「そんなことないよ。心愛ちゃんは、可愛い。」
「そんなことあるもん。可愛くなんかない。」
「心愛ちゃん」
「あの受付の人、すごく綺麗だったもんね。
それに私、妹にしか見えないくらい、色気ないし。
大人に見られなさすぎて悲しくなってくる」
彼女は静かに溜息をついた。
「やっぱり私、大人になれてないんだなあ…」
彼女は俯いた。彼女にだんだんと深く黒い影が、すーっと伸びていく。
受付をしたとき受付嬢が発した言葉が、不本意ながら彼女の心を不安定にした。


「可愛い妹さんですね」
僕と彼女は、目を丸くした。
彼女はあどけない顔をしているから、妹と間違えられても仕方がない。
僕は何も気にならなかったが、彼女は多少のショックを受けていたようだ。
「妹じゃなくて、彼女なんです、僕の」
「えっ…ああ!そうだったんですね。失礼致しました…」
受付嬢は申し訳なさそうに深く頭を下げて言った。
彼女は俯き、黙っていた。
それからというもの、彼女は機嫌が悪い。
「心愛ちゃん、こっち見てみようよ」
僕が彼女の手を引っ張り歩こうとしても、彼女はその場から一歩も動こうとはしない。
「心愛ちゃん、行こう」
僕に無言で抵抗する彼女。
「ほら、行くよ」返事はない。
しかし先へ進まなければ、時間はあっという間に過ぎていく。
渋々、彼女は僕についてきた。





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