希望の夢路
銀色の巨大サークルは見れば見るほど繊細で、
これを創るのにどれほどの時間を費やしたのか考えてみたが、
かなりの製作時間になるのだろうということしか思い浮かばなかった。
気の遠くなるような作業を繰り返し行って初めて、
このような人をあっと驚かせるような作品ができるのだなと思うと、それだけで価値があると思えた。
「執念に似た情熱を傾けられるって、すごいなあ」
「そうだよね。情熱を傾けられるものがあるって、素晴らしいよな」
僕は溜息をついた。
「僕にはできないけど」
「そんなことない。ひろくんならできる」
「そんなことないよ。とてもじゃないけど、僕はこんなの創れない」
僕はふっ、と笑った。
「それはそうかもしれないけど」
彼女は真剣な目で僕を見て言った。
「ひろくんなら、何でもできる気がするの。だって、ひろくんは私の…」
そこまで言って、彼女は話すのをやめた。

僕は、心愛ちゃんの…?
その先が、とても気になって仕方がない。そんなところで、止めないでくれよ。
すごく気になるじゃないか。

「そこで止めないでよ。最後まで言う」
僕は、彼女の手をそっと握った。
「…ひろくんは、私のヒーローだから。
いつも私を元気づけてくれるし、いつも私を助けてくれる、ヒーローだから」
緩みそうになる頬を引き締め、僕は彼女を見つめた。
「それにしてもすごいよね。針金一本一本をあんなに綺麗な円形にできるんだもん。
芸術家って、本当にすごい」
僕は黙って頷いた。
芸術家が傾ける『情熱』と言うものを自らの心の中にも燃やしたいー
そう思った瞬間だった。

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