希望の夢路
第2章 繋がれた糸

本好きの二人

僕が彼女に出逢ったのは、今から二年前。
青空と陽射しが眩しい、爽やかな夏の日―
開放的な心地良い図書館で、僕は彼女と、運命的な出逢いをした。
少なくとも僕は、そう感じている。
彼女に出逢ったのは、奇跡のような気がした。
しかし、必然的であるようにも思えた。

僕は休日に、近くの図書館できまって読書をする。
もともと本を読むのが好きで、読む種類は教養だったり小説だったり、
エッセイだったりするけれど、僕が一番好きなのはエッセイだ。
何故かというと、日常の出来事がまるで小説のように綴られるエッセイは、
読んでいてとても面白いし、作家によって物の見方が全く違う。
そこがとても面白い。そして、こういう考えもあるのかと、感心するとともに勉強にもなる。

本は、人生を豊かにするものだと僕は思っている。
人生を豊かにし、本から得られる情報は己の力となり教養となる。
本から人生のヒントを得られることだってある。
生きるヒントー特に自己啓発の本には湧き上がる勇気と元気が込められている気がする。
前向きに生きるヒントが、本にはあるような気がする。
僕はいつもの場所へと向かった。週末いつも行く、あの図書館へ。
いつもと変わらない週末の、充実したひととき。
いつもの椅子に座り、本をじっくりと読む。
いつもと変わらない日常のはずだった。彼女と会うまではー

開放的な空間の、洗練されたこの図書館―僕のお気に入りの場所だ。
中へと入り、本棚の本を眺める。さて、何の本を読もうか。
本棚をじっくり見ながら歩いていると、ふとある本が目に入った。
その本は、「星座・宇宙の本」と書かれた本棚にあった。
星座や宇宙には興味はないし詳しくもないが、星を見るのは好きだ。
星は、とても綺麗だ。見ているだけで、癒される。
『星空風景』と書かれたその本は、写真集だった。
吸い寄せられるように、僕はその本を手に取った。
が、本の固い感触はなく、とても柔らかく温かい感触がそこにあった。

―ん?

すぐにわかった。とても柔らかな温かい感触が、何なのかということに。
今にも折れてしまいそうなほど細く白い、柔らかな手―その手の持ち主は、
黒髪のショートヘアの女性だった。
いや、女性というよりも『女の子』という言葉が似合う、
あどけなさの残る顔をしていた。恐らく、二十代。
彼女もこの写真集を手に取ろうと手を伸ばしていたようで、
僕は彼女の手に触れていた。触れた瞬間、驚いて互いの顔を見た。

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