希望の夢路
第3章 奇妙な共同生活

言えない秘密

とうとう、ばれてしまった。知られないように、彼にはずっと隠していたのに。
よりによって、彼とのデート中に気分が悪くなるなんてー
「いたっ…」
「心愛ちゃん、大丈夫?」
彼は、お腹を押さえて痛みに耐える私の背中を擦った。
「大丈夫です…」
「大丈夫じゃないだろ?無理をするんじゃない」
彼は、とても優しい。
「最近、具合が悪かったり気分が悪くなったり、お腹がよく痛くなるみたいだけど…
本当に大丈夫なのか?体は大事にしないと」
彼に嫌われたくなくて、私はずっと難病であることを隠していた。
「どこか、悪いんじゃないのか」
彼は心配そうな顔で私を見る。
「どこも…いたたた…」
私は鞄から薬を取り出し、水で飲みこんだ。

「薬?」
「はい…。痛み止めです」
「痛み止め…?」
「はい」
私は頷いて言った。
「大丈夫です、すぐ良くなりますから」
「無理しちゃ、だめだよ」
「大丈夫です、本当に…」
その時、ずきん、とお腹の痛みが強くなった。
「…っ、」
私は、あまりの痛さにお腹を手で押さえ、俯いた。
苦痛に歪んだ私の顔を見て、私の背中を撫でていた彼が言った。

「全然大丈夫じゃないじゃないか。ここ最近、ずっとこんな調子だったの?」
「たいしたことないんです。気分が悪くなっても、すぐ治りましたし…」
「心配だ。このまま帰すわけにはいかなくなったな」
「えっ…?博人さん…?」
戸惑う私をよそに、彼は私を背負い歩きだした。
「博人さん、おろして…」
「おろさない。今日は…いや、これから僕とお家デート」
「博人さん…でも…」
「いいから。寝てていいよ、着いたら起こすから」
「はい…」
起きていようと思ったけれど、迫りくる睡魔には打ち勝てず、
私は彼の逞しく大きな背に揺られ、いつの間にか夢の中へと入っていった。

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