希望の夢路

赤髪の美人姉妹

私は寝室のベッドから、私の近くに立つ二人の女性を見上げた。
「あなたたたちは、一体誰?」
私は声を振り絞るようにして言った。
こんな夜中に、しかも見知らぬ二人の女性が自分の家の寝室に黙って立っているだなんて、
怖すぎて鳥肌が立ってくる。それにしても、一体私の家にどうやって入ってきたのだろうか。
「私は魁利(かいり)。この子は、楊香(ようか)。」
魁利は私を見て微笑んだ。
「ていうか、主がこんなやつかよ」
「こら。少しは慎みなさい」
「だってさ、もっとましな奴なんて、ほかにもいんじゃん。なんでこいつの中なんだよ」
「楊香」
「はいはい、わかったって。姉ちゃん、目が怖い」
魁利は楊香を睨んだ。

「あの、私のこと忘れてません?」
「相手にする必要ないし」
ばっさりと言い切る楊香に、私は唖然とした。
「ごめんね、心愛ちゃん。楊香は私に似ず口が悪いから許してね」
私の名前を呼び捨てしている時点で驚いた。
まるで友達に謝るみたいな物言いじゃないか。
私とあなたたちは、友達じゃないんだぞ。
しかもいきなり出てきて、心愛ちゃんだなんて馴れ馴れしく言われたこっちの気持ちも
少しは考えてくれてもいいんじゃない?

今のこの状況を、私は受け入れられていない。

「さっきも言ったけど、私達は、あんたと共生してるわけ。わかる?」
偉そうな目で私を見下す楊香。
その威圧的な態度は、やめてほしいんだけどな。
もとからそういう性格なのかもしれない。そうだとしたら、かなり悪質だ。
「つまりね」
ゆっくりと諭すように話し出す魁利の言葉を遮り、楊香が腕を組んで言った。
「よーするに!私と姉ちゃんは、人間じゃないわけ。病魔なわけ」
「病魔!?」
私は頭が真っ白になった。

「え、いや、ちょっと待ってよ。病魔って」
「びっくりするよね、ごめん」
頭を深く下げ、魁利は言った。
「心愛ちゃんの腸を蝕む病魔が私達ってこと」
「ということは、腸に潰瘍ができて炎症を起こしてるっていうのは」
「そ。私達のし、わ、ざ」
楊香が不敵な笑みを浮かべた。
「なんてこと言うの」
「でもさ、まじ居心地最高よね」
「ごめんね。楊香のことは気にしないで。気が強すぎるし天邪鬼(あまのじゃく)だから」
「うん…」
戸惑いながらも、私は頷いた。
「とにかく!ま、よろしく。ながーい付き合いになりそうだしい?」
「楊香のことは気にしないで。これからよろしくね」
「ま、居心地の良い住処を提供してもらってるから、多少のことは我慢してやるよ」
多少のことは我慢してやる、って…。
「辛いかもしれないけど、仲よくしてくれると嬉しいな。よろしく」
魁利が私に左手を差し出してきた。
「ふん。ほら、」
楊香もそう言って渋々、私の目の前に右手を出し、握手を求めてきた。
「うん、よろしく…?」
私は首を傾げた。
目を少し離したすきに、二人は跡形もなく消えていた。
「えっ?今の、幻…?」
幻かと思ったが、確かに二人の手の感触は残っていた。
「本当?幻?」
私は、まるで夢を見ているかのようで、現実のようには思えなかった。
しかしそれが現実だということは、すぐに思い知らされることとなった。
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