希望の夢路
第4章 恋の迷宮

アパレルウーマン

私は、幸せになんてなれない。
ましてや、男の人になど、愛されるわけがない。
なのに、私は求めてしまった。
気付けば、求めてしまっていた。夢を、見てしまった。幸せすぎる、夢を。
でも、この幸せな夢をもう見るわけにはいかない。
ピリオドを打たなければー。

もう、博人さんには会わない。別れる。
所詮無理な話だったんだ、私が、恋愛なんて。愛されるわけがないのに。
昔からそうだった。人を好きになることはあっても、愛されることはなかった。
いつもいつも片想い。振られっぱなし。
どうしてこうも振られるのかと、私が何をしたんだと、自分に嫌気がさした。
人を好きになるのが臆病になったあの日々。苦すぎる思い出。
結局、私は愛されるに値しない人間なのだ。そんなこと、とっくにわかってた。
なのに、私は博人さんを好きになってしまった。
どうしようもないほどに、好きになってしまった。
ずっとずっと一緒に居たいと思うほど素敵な人に、出会ってしまった。
あんな素敵な人に、愛されるわけないのに。のぼせすぎてしまっていた私が、情けない。
博人さんには、もっと相応しい女がいてー
「心愛ちゃん」
博人さんが私を呼ぶ。彼は私の隣で、私に似合う服を選んでいる。
「これはどうかな?似合うと思う」
彼が私に突き出したのは、温かそうな白のワンピース。
「あ、それと、これもね」
彼は他にも私に似合うものを選んでいたようで、かごのなかは可愛らしい服で溢れていた。
試着してみてよ、と彼は笑った。
私は、彼が似合うといって渡した服を見た。
とても可愛くて、お洒落な服。
こんな可愛い服、私には似合わないのに。
「心愛ちゃん…?」
黙りこくる私を見て、彼は心配そうに言った。
「気に入らない?」
「いいえ、すごく…可愛いです」
私は、自分には不似合いの洒落た服を見て言った。
「よかった…じゃあ、着てみてよ」
彼は安心したように言った。
私にはこんなの、似合わない。遥香さんが着た方が、よっぽど似合う。
とってもお洒落で綺麗な女だしー。
私はちらりと遥香さんを見た。彼女は、私と彼のやり取りを見ていた。
「お似合いですよ。着てみましょう」
彼女は、にっこりと笑った。彼女の笑顔は、とても美しかった。
誰もが見惚れてしまうような、美しい女。
―勝てない。敵わない。
こんな素敵な人がいたら、誰でもすぐに好きになってしまう。
大和撫子という言葉がぴったりな女性。
この女には勝てないと、そう心から思った。
彼女はアパレルショップの店員で、
私と彼が今ショッピングをしているこの店の経営もしているという。
服のデザインも手掛けているというから、驚きだ。
彼女はとても美人でお洒落な服を着ていた。
おっとりとした性格が、更に彼女の上品さを際立たせていた。

こんな素敵な女、男が放っておくはずがない。

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