もう、我慢すんのやめた


だけど、私の心はワガママで


少なからずこの一週間、佐倉の彼女として過ごせて楽しかったな……とか。

冷やかされるたびに、佐倉が私を『彼女』だって認めてくれるのが素直に嬉しかったな……とか。

こうして放課後にたわいもない話をすることがなくなるのは、嫌だな〜なんて。


「あの、佐倉……」

「ふりじゃなくて、本当の彼女になれば」

「え、……え!?」



風が吹く。
私と佐倉の間を、ヒューってぬるい風が優しく。


それが、佐倉の髪を揺らして


同時に、私の心を揺らした。



「本当のつっても、芽唯がやめたいときにやめたらいいし。ふりとか仮とか期間限定とか、俺もそういうのクソだりぃし」


”ちょーどいいんじゃん?”


そう言って、私の返事も待たずに歩き出す。


私の心、散々掻き乱して
こんなにドキドキさせて


なのに、こんな時ばっかり、佐倉の顔はちっとも赤くならないなんてズルい。


「……さ、佐倉」


慌てて佐倉のあとを駆け足で追いかけて、なんて言ったらいいんだろう?ってぐるぐる考える。


本当に付き合うってことは、

もし、本当に……もしもの話だけど


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