もう、我慢すんのやめた


馬鹿みたいに、弥一のことばっかり追っかけて。すぐそばにあった新しい恋に気づけないまま過ごした時間を、今になってとても悔やむ。


佐倉の背中に、ぎこちなく手を回して、佐倉に負けじとギュッと強く抱きつけば



「……っ」



佐倉の肩が少し驚いたように跳ねて、こんな時だっていうのに、そんな佐倉を可愛いなって思う。



佐倉に好きだって言いたい。

だけどそのためには、弥一との関係をちゃんと終わらせなくちゃいけない。


中途半端なまま、佐倉の想いに応えるのはダメだなって思うから。


だから、もう少しだけ。
あとほんの少しだけ待ってて欲しい。


いつもいつもワガママばかりの私で本当にごめん。


「……佐倉、あのね……私」

「分かってる。……でも、もう遠慮しねぇから」



私の言葉を遮って、自己解釈してしまった佐倉に拍子抜けする。『弥一のことちゃんとケジメつけるから、待ってて欲しい』って伝えるつもりだったのに。


全然分かってないよ。


だけど、いいや。
早く弥一との関係にケジメをつけて、今度は私から佐倉に伝えるんだ。


"好きだよ"って。




「……佐倉、ありがとう」

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