もう、我慢すんのやめた
弥一からは一言"わかった"とだけ返事がきたけど、勘のいい弥一のことだから、何の話かはもう分かってると思う。




「佐倉、ごめん!今日はこのあと用事があって」



放課後を知らせるチャイムが鳴り響いてすぐ、佐倉の席まで駆け寄る。



「……分かった。あんま遅くまで出歩くなよ?」



少し考える素振りをした後、優しい佐倉は静かに頷いてくれるけど

今日も佐倉と一緒に帰りたかったな〜なんて、名残惜しく佐倉を見つめてしまう。


弥一との関係にケジメをつけるって、自分で決めたことなのに、弥一と向き合うことに不安しかない今、ここで佐倉が行くなって言ってくれたらいいのに……って。


また、ずるいことを考えたりして。



「芽唯?」

「え、あ!……うん、家に帰ったら連絡するね」

「……なんかあったのか?」

「ううん、本当になんもないよ!」


ニコッと笑顔を作って佐倉を見れば、少し疑ってる佐倉の目に背中を冷や汗が流れてくる。


佐倉、変なところ鋭いからなぁ。

これから弥一に会おうとしてること、もしかしたら私の反応を見て勘づいてるかもしれない。
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