もう、我慢すんのやめた


フワッと揺れる、明るい茶髪。

左目の下にある泣きぼくろ。

薄くて形のいい、意地悪に微笑むくちびる。


「……っ、俺でいいの?」


そう、控えめに聞かれた瞬間、私の目から大量に涙が溢れた。


佐倉がいい。佐倉じゃなきゃ嫌なの。
そう言いたいのに、涙が邪魔して上手く言えなくて、代わりにこれでもかってくらい頷く。


「今度こそ、もう絶対離さねぇけど。それでも本当にいいんだな?」



そう確認する佐倉に、今度は首を振るよりも、もっとちゃんと気持ちが伝わればいいと思った。


"離さないで"の意味を込めて。


1歩前に足を踏み出してグッと佐倉との距離詰めれば、驚いたように目を見開いている佐倉に、目一杯の背伸びをして、


くちびるに、優しく触れるだけのキスをする。



「……ばっ、」


耳まで染まった佐倉を見ながら、出会った頃を思い出して、こうして今、佐倉が隣にいてくれる奇跡に感謝した。

ぜんぶ、ぜんぶ。
今日までにあったこと全ては、私と佐倉が出会うために必要だった過去で。


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