おじさんは予防線にはなりません
「なに、言ってんの?
私が好きなのは大河だよ。
池松さんのことなんて、もう、忘れたんだから」

声が上擦っていないか気になる。
震えそうな身体は手をぎゅっと握り込んで耐えた。

「……そう。
なら、いいんだけど」

小さく呟くように言った大河は、まっすぐ前を見て運転していた。

諦めると決めたのだ、池松さんを。
諦めて、大河を好きになって、大河を愛して、大河と幸せになるんだって。

なのに。

――いまさら迷うようなこと、知りたくなかった。
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