おじさんは予防線にはなりません
「早く気づいてやれなくて悪かったな」

「池松さんは悪くなんかない、です」

急に目の前が暗くなったと思ったら、池松さんが至近距離に立っていた。
どうしてかとか考える間もなく、その胸に顔が押しつけられる。
なにが起こっているのかわからなくて混乱していると、後ろあたまに回った池松さんの手がそっと、私の髪を撫でた。

「無理、しなくていいんだぞ」

とうとう涙がぽろりと落ちる。
そのまま、池松さんの胸で思いっきり泣いた。

「落ち着いたか」

「はい。
ありがとうございました」

私が泣きやむとポケットからハンカチを出した池松さんだけど、あまりのしわしわ具合にまたポケットに引っ込める。
そういうのはなんだかおかしくて、思わずくすりと笑いが漏れた。

「ちょっと待ってろ。
本多さんに話して、病院連れて行ってやるから」
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