かわいい戦争



店内は金と黒を基調とした、シックでゴージャスな大人っぽい内装だった。


大きなシャンデリア、おしゃれな間接照明や飾り、高価そうなインテリア……。


どこを見ても眩しい。



お酒の匂いと甘い香水の匂いに、鼻の奥がツンとする。


女性特有の愛くるしい声と甘ったるい猫なで声があちこちから聞こえ、ひつじくんは居心地悪そうに眉間にきゅっとしわを寄せた。



……呆然としてる場合じゃない。

璃汰のお母さんはどこにいるんだろう。



不審に思われないよう、さもこれから行くテーブルが決まってるかのように店内を歩きながら、キョロキョロと探す。



「いた?」


「ううん、いな……あっ!」



いた。

璃汰に見せてもらった写真とおんなじ人。


絶対あの人だ。



お店の奥にあるテーブルを囲って、スーツを着た1人の男性客を接客してる。


ブロンドの髪の、綺麗な女性。




「やっぱりリンカちゃんが一番だ。だてにこの店のナンバー1じゃないね!」


「ふふ、そう言っていただけて嬉しいです。年も年で、若い子に敵わないこともあるのに、新人の頃から指名し続けてくださるのはあなただけですよ」


「そんなことないさ。リンカちゃんはここにいる誰より魅力的だよ。だから皆リンカちゃんを独占したくて必死になるんだ」


「まあ。それじゃあ今日も必死なんですか?」


「もちろん。今日だけじゃなくいつもね。リンカちゃんと過ごすためならなんでもできるよ」




リンカ。

それがこの店での名前。


ナンバー1だとは初耳だ。


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