かわいい戦争


一人一人がエールを届けると、最後にまろんちゃんが一歩前に出た。



『あ、あたし……!いつかセンターに堂々と立てたら、またリタ先輩にあのリボンをもらいに行きます。それまで待っていてください!』



不安げにしながらも宣言する声はたくましい。


まろんちゃんの頑張りは、わたしたちファンにも伝わってるよ。




『わたしたちみーんな、リタのファンだよ』


『ううん、あたしたちだけじゃない』


『リタのファンは数えきれないくらいいるよ』


『デビューしたらもっと増えるだろうな。リタかわいいもん』


『だから自信もってイベントに臨んでね』


『リタ先輩!皆、リタ先輩のこと大好きです!!』




ペンライトを振った6人が、停止する。

動画が終わったんだ。



「璃汰、愛されてるね」


「ええ、そうね」



強張っていた表情がぎこちなくほころぶ。



「……実は、あいつをイベントに呼んだの」


「あいつ、って……」


「母親よ」



そうか。

さっき見かけたリンカさんの姿は、見間違いじゃなかったんだ。


璃汰から招待したなんて、今までじゃ考えられなかった。



「あたしを好きでいてくれてる人がたくさんいるってわかってる。……でも、あいつが観に来たことなんか一度もなかったから……」



リンカさんがイベントに訪れたから、いっそう緊張してたんだろうな。

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