かわいい戦争




「クラスメイトなんだからもうちょっとラフに行こうよ。ね、海鈴(かいり)ちゃんもそう思うでしょー?」


「えっ、下の名前、カイリちゃんっていうんだっけ?めっちゃかわいいね!?」


「わかる!あたしも最初思った!漢字もさ、海に鈴って!おしゃれかよ!」


「名は体を表すっていうけど……まさにそれだわ」




あ、あれ?今日は褒められっぱなしだぞ?

わたし、一生分のいいことをここで使ってない?大丈夫?



「きょ、恐縮、です……」



普段あんまり褒められ慣れていないから、どぎまぎしてしまう。



素野 海鈴。

わたしの名前。


自分でも気に入ってるから、かわいいって言われて嬉しいな。




「名は体を表すって言ったって、海鈴ちゃんの顔、半分隠れてんじゃん」


「でも、こう、わかんない?マスクしてても雰囲気あるじゃん。最近話題のあの子に似てる!激似!!ほらっ、もうすぐデビューするあのアイドルの!」


「あー、あの子ね。確かに似てるかも。海鈴ちゃん、メイクもちょっとしてるよね?めっかわ」


「……あ、ありがとう……っ」


「ふはっ、どんだけ照れるのさ!」


「反応もかわいいとか、やめて、ずるいー」




この子たちは、いい人すぎるんじゃないだろうか。


お世辞じゃなく心からそう言ってくれてるのが、なんとなくわかるから、余計にどうリアクションするのが正解かわからなくて戸惑う。



マスクをしていて助かった。

この赤面がバレずに済む。


< 6 / 356 >

この作品をシェア

pagetop