君の嘘は桜色
君の嘘は桜色


「紗良、一緒に帰ろ」


卒業式も明日に迫り、桜が蕾を膨らます季節に俺はいつもの様に彼女の紗良と一緒に帰る


この日常もあと少しで終わってしまう、、、


紗良にはまだ告げていないが、俺は卒業と共にアメリカに留学することになっている


本当はもっと前に伝えるべきだってわかっているけど、笑っている紗良の顔を見ると伝える勇気がなくなってしまう


アメリカに行くと言ったらどんな反応をするだろう


泣いて行かないでと言ってくれるのか、行ってらっしゃいと笑顔で送り出してくれるのか、


そして俺達は付き合い続けられるのか


付き合ったきっかけは紗良の告白だった


『大好きです。』


たった5文字のその言葉も俺にとっては変えることの出来ない宝物だ


「どうしたの?何か嫌なことあった?」


きっと死んだ魚のような目をしていた俺の顔を覗き込んで笑う紗良


「桜みたい、、、」


まるで桜が花開くような笑顔に思わずつぶやく


「桜?嬉しいな、私桜大好きなんだ
明日の卒業式には咲くといいね桜、」


そう言ってまた笑う君に喉まででかかった言葉が詰まる


『俺、アメリカに行くんだ』


飲み込んでしまった言葉


わかってる、伝えるのが遅くなれば遅くなるほど紗良を傷付けることなんて


わかってる、きっと紗良は笑って俺の夢を応援してくれることなんて


わかってる、だから怖かった


もしかしたら伝えたら紗良は俺から離れていくんじゃないかって


“伝えなきゃ”という気持ちと“伝えたくない”という気持ちでグラグラと揺れるだらしない思考


もう少しで曲がり角についてしまうきっと今伝えないと後悔する


それでも意気地ない俺は黙って歩く


そんな俺を見ながら紗良も黙って歩く


「また明日、楽しみだね卒業式」


そう言って俺達はお互いの家路を辿る


「何やってんだよ、俺、、、」


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