愛されプリンス½
突然天王子が振り向いて、背中を擦っていた私の手をつかむ。
ギュ、と力をこめられて、すぐ近くに茶色い瞳。
「……ほんとバッカみてー」
吐き捨てるように言うと、私から手を離しトイレを出ていった。
「ちょっ…どこ行くの!?」
慌てて後を追いかける。
天王子は振り向かない。
「帰る」
「え…」
「理由は適当に言っとけ」
そして本当に、その足で店を出て行ってしまった。
…何あれ。感じ悪いなぁ。
だけど
いつも自信満々で、余裕綽々の天王子の弱さにはじめて触れてしまったような気がして
なんだか心がざわざわした。