愛されプリンス½




取り残された私、と。



「…あいつ、忘れてんじゃん…」



コンクリの上に転がっている、ビニール袋を拾い上げた。



中には奴の命、焼きそばパン。




…せっかく買ってきたのに。





ふぅ、と息を吐いて、ベンチに腰かけた。




流れる雲はどこまでも穏やか。



…さっきまでのピリついた空気は嘘みたい。




天王子の声が、今でも耳の奥に残ってる。



妃芽ちゃんの、天王子を見て感極まった様子も。




…いったいどういう知り合いなんだろう。



なんだか、ただよらぬ感じだったけど。



過去に何か、あったのかな…?





“あいつには傷がある”


“タチ悪い傷がね”




いつかの水川の言葉が、なぜかふっと蘇った。




天王子の傷。


完全に治ったかのように見えて、中は血みどろでグチャグチャの…






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