愛されプリンス½
「あの、今は私のことはどうでも…」
「もっとゴチャゴチャすればいいのに」
独り言のようにそう言う水川は、どこか楽しそうだった。
「もっとゴチャゴチャして、グチャグチャになればいい」
「…は?」
「思いっきり傷つけて、逆に滅茶苦茶に傷つけられればいい。再起不能になるくらい」
「…水川…?」
感情の読み取れない無邪気な顔で、水川が笑う。
ゆっくり立ち上がる。太陽が逆光になって、その表情はよく見えない。
「言っとくけど俺は、一花ちゃんの味方でも妃芽の味方でもない。
玲の味方だから」
「………」
「助けてあげられなくてごめんね?」
太陽が、雲に隠れる。
あらわになった水川の顔は、いつも通りの笑顔だった。
「引き金は引いた。あとは乞うご期待って感じ?」
いちごミルクのような、底抜けに甘い笑顔。
甘ったるくて、
……胸やけする。
「じゃ、そーゆーことで!」
水川は「あ、ルミちゃーん?」なんてさっそく女子に電話しながら、さっさと屋上を出ていった。