愛されプリンス½
その日、学校が終わっていつものように家に帰ると、お母さんのハイヒールの隣に、見慣れない革靴があった。
…またか。
俺はため息をつく。
お母さんが家に男を連れ込むのは珍しいことではない。
しかもほぼ毎回と言っていいほど違う男だ。
どうせまた二人でリビングで寛いでいるんだろう、我が物顔で。
…こんな日は自分の部屋に引きこもるに限る。
そう心に決めて、玄関のドアを閉めた時だった。
「んっ…」
奥から聞こえた艶めかしい声。
ゾワリ、と背中を嫌なものが駆け巡った。
行くな、と本能が告げている。
行って絶対にいいことはないと分かっていた。
でも、心のどこかで信じたくなくて。
俺は無意識のうちに足音をたてないようにして、奥の寝室に向かっていた。
ゆっくりと扉を開ける。
そこにはベッドの上で、見知らぬ男とキスをする、母親の姿があった。