愛されプリンス½
鼓膜を心配する私の右手を、天王子が取る。
「じゃぁ帰ろうか」
「…あの手離し「ぎゃぁぁぁぁぁ~~っ!!!」
「…………」
ダメだ。ここでは満足に会話もできない…。
私は天王子と手を繋いで、校門から外に出た。
私と天王子が付き合っているのが知れたら、一体今度はどんな仕打ちをうけるんだろうと身構えていたけど。
意外と何もない…どころか、天王子の人気は更に上がっているらしい。
なんでも【あんなにカッコいいのに女を顔で選ばないプリンス超ステキ!】ということらしい。…複雑だ…
妃芽ちゃんはあの後すぐに元々いた学校に再び転校していった。
「もともと玲を追いかけて転校してきただけだったし。もう用はないから」
最後はそう言って、なんだかすっきりした笑顔を浮かべていた。
申し訳なさそうに何度も「ごめん」と謝られた。
九条先輩もあの事件以後、私に関わることはなくなった。
天王子の本性を言いふらすのかと思ったけど、なぜか「好きな女を命がけで救出するプリンス超ステキ」ということで、ファンクラブの中で逸話として後世まで語り継ぐ、ということだ。
「…あのさ」
私の声に、ん?と天王子が顔を向けた。