王女にツバメ

ツバメは結局、死んでしまった。王子の言うことを聞いて寒いその場所へ留まったから。

「あ! いや、チョコの催促とかじゃなくて、普通にデートしたいだけで」

本命に予定でもあるのか。
それを埋める代理なのか。

あたしが寂しさを埋める予定だったのが、埋められる側になるとは。

「裏葉さん?」

琉生がこちらを見て首を少し傾げる。
でも最初から、そうだった。

「ごめん、その日仕事入ってる」
「休日出勤?」
「うん、今忙しくて」
「そっか、お疲れ様」

良い子だなと思う。いや、悪い人間だったことがあたしの前であっただろうか。

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