無気力オオカミくんは、私だけに夢中。

サボり常習犯からは焦りの「あ」の字も感じられない。
私の太ももの上で呑気に寝返りを打って、スマホをいじり始めた。



「に、西野くん……」

「“くん”いらない」

「ええ……」

「利奈、さっき俺のこと“西野”って呼んだじゃん。あれでいいんだよ」



でも、恐れ多すぎない?
学校1のイケメンを苗字で呼び捨てるなんて。



「ほら、練習。呼んでみて」


スマホを伏せて、横目で私を見つめてくる。



「……利奈」

「う……」

「早く」

「……に、西野」



恥ずかしくて、また両手で顔を覆ってしまった。
絶対、顔赤くなってるし。


「だから、なんで顔隠すかな」


手首をつかまれて、そのまま右手と左手をグググッと引き離されて。
視界が開けると、綺麗な瞳の中に一瞬で吸いこまれる。



「女子で俺のこと“西野”って呼ぶの、利奈だけだよ」

「……私だけ?」

「うん。利奈だけ」



私の太ももから、ゆっくり上体を起こす。

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