無気力オオカミくんは、私だけに夢中。


キョトンと見あげる。



「西野もリップ欲しいの?」

「いや、なんでそうなる……」



呆れた顔でつぶやくと、西野はレジにそのリップを置いて自分の財布を取りだした。


……え?


そのままお会計を済ませた西野。


呆然と眺めていると、リップが入った紙袋を差し出してきた。




「はい」

「はい、って……え?」

「あげる。プレゼント」

「……ええっ!!」



これって、買ってくれたってこと?

え、なんで!?



「俺が利奈につけてほしいって思ったやつだから記念に。受け取り拒否はナシね。なにも言わず受け取って。じゃないと俺がダサいから」


「う……え、あ、ありがとう」



どうしよう。

ドキドキどころじゃないんだけど。

バクバクどころでもないんだけど。



ほんとの恋人みたい。


思い上がっちゃだめだってわかってるけど、こういうの初めてなんだもん。


感動っていうか、自分でもおかしいとは思うけど、うっかり涙が出てきそうだった。

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