無気力オオカミくんは、私だけに夢中。


降りるとき、電車の中は身動きができないほど混んでたけど、私の手を引いてホームに誘導してくれた。


駅から出ると、同じ高校の制服がチラホラと見え始める。


近すぎず、遠すぎず。
慣れた距離を保って隣を歩く私たち。




「さっきから言おうと思ってたんだけど、お前、なんか今日顔ちがくね」

「え……」



学校まであと100メートルくらいの地点で、陸人が私の顔をのぞき込むようにしてそう言った。



……気づかれた?

実は今日、西野が買ってくれたリップを塗ってきた。




「違うって、どこが?」

わざと聞いてみたら、

「なんか女っぽい」

って。




「もともと女なんですけど」


そう言えば、いつも大抵「嘘つけ」とか「忘れてたわ」とか「いつ性転換したんだよ」とか、そんなセリフが返ってくる……のに。



「知ってるよ」

「え」

「利奈は女だろ」

「う、うん」

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