罪作りな彼は求愛方法を間違えている
度々、彼に声をかける勇気ある女性も何人かいたが、一度も彼は彼女らの誘いに乗ることはなかった。
それでも、彼に会いたさに通いだし、女性達が熱い視線を送っているというのに、高橋 斗真という男は素知らぬふりを続けている。そのせいで私に向けられる敵意ある視線があると伝えても、この男は一年前の事を蒸し返す。
「千花は、俺に恩があるって忘れてないか⁈」
ええ、忘れてませんよ。
「酔っ払いから彼氏のふりして助けてくれたのは感謝してますよ」
「覚えているなら、恩がある俺を助けてくれてもいいだろう⁈こっちにその気がないのに女豹のようにギラギラと視線を向けられてる俺の身にもなれ。お前という防波堤があるから、俺はこうして美味しい酒が呑める。千花も、俺というスペックの高い男といるから、変な男に絡まれることがない。絡まれても、また助けてやる。……『ギブアンドテイクだろう』」
そう言い、店内にいる人の目も気にせずに、いや、見せつけるように私の耳元で艶めく声で囁やくと、こちらの気も知らずに琥珀色の液体が入ったグラスの中の丸い氷を転がしながら笑う罪な男…
「自分でスペックの高い男って口に出して言うんですね」