君と半分
あの夢の中はリアルすぎて、今でも鮮明に思い出す。

丸々がいなくなる事が怖くて仕方なかった。



丸々は事故だった。


村の宴会で村中が騒いでいた最中、ケンもいた。


あの、おらが嫌いな松おじさんがハメを外した拍子に、鉄パイプが丸々の頭に落ちた。


おらは最初なにが起こったのか分からなくて、ただ立ち尽くした。


『丸々!』


泣き叫ぶケンのかぁさんと、慌てて医者を呼びに走ったケン。


『丸々!』


一瞬スローモーションに見えたんだ。


丸々はヒクヒクして目を閉じようとした。


その瞬間、おらは思わず力なくさけんだ。


『丸々?!丸々!』


目を閉じちゃダメだ!


丸々は目を開け、おらを見てた。 


だけど、本当に心臓が止まったのはこの時だったんだろう。


目を開けて丸々は死んだんだ。おらが名前を呼んだからかな。


それからケンは戻ってきた。医者はこの町の下町にいると言って。


意識のない丸々をおらは抱えたまま、走った。


『まだ暖かい』


誰かがそう言ったけど、まだ暖かかったのはおらが暖めていたからだ。


だけど本気でおらは死ぬとは少しも思ってなかったんだ。


身近で死を感じたのはこれが最初だった。


病院に着いて心臓マッサージをしている時も死ぬはずがないと本当に思ってた。

医者がおら達の様子を伺い、まだ続けますかと言って、じい様がもういいですと医者に答えた。


心臓マッサージの器具が取り外されていき、初めて丸々が死ぬと思った。


どうして止めてしまうの?まだこんなにも息をしそうなのに止めたら本当に死んでしまうよ。


そしたら涙が溢れて止まらなくなった。


丸々が死んだのはおらのせいだ…。


おらがちゃんと丸々を見てなかったから。


強く抱き締めて冷たくならないように毛布に包むと、医者は言った。


暖めては腐るのが早くなると。おらは全てが悲しくて泣き叫んだ。
< 18 / 26 >

この作品をシェア

pagetop