ワケあって、元彼と住んでます。
「じゃあ暇なんだな、はいコレ」



ジャラジャラと鍵の束を手渡されて、咄嗟に受け取ってしまった。



「すぐ戻るから車で待ってて」



返事を待たずにコンビニに入っていく。

その後ろ姿を見ながら、せめてもう少し、まともな格好で外に出ればよかったと思う。

手渡された鍵で車の助手席にお邪魔した。
後部座席にはダンボールが数個とキャリーケースが積まれていて、人が座れるスペースはなかった。

瞬ちゃんはタバコを買っただけで、本当にすぐ戻ってきた。
近くで見られたくなくてうつむいてしまう。



「家でいいの?」



エンジンをかけながら瞬ちゃんが聞く。



「あ、散歩中なんだっけ」



含みを持たせるような言い方。
言い出したのは私だけどカチンとくる。



「……香穂?」

「すっぴんだからあんまり見ないで」

「変わんないよ」

「いやいや……」



10年も経てば変わる。
瞬ちゃんがタバコを吸うことも車に乗ることも、知らなかった。
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