早熟夫婦〜本日、極甘社長の妻となりました〜
私たちのほんわかしたやり取りを眺めていた最年長のおじさまエンジニアが、微笑ましげに「フレッシュだねぇ。若いっていいねぇ」なんて言っている。

冴木さんを交えて、皆でほんの一時楽しく雑談していると、私はふと視線を感じてなにげなく振り向いた。その先に、なぜかじとっとした目でこちらを見ている尚くんがいてギョッとする。

な、なに!?　私、なにもしてないよね？

ひとり戸惑っていると、尚くんの斜め前に座る人気デザイナーの加々美さんもそれに気づいたらしく、ボソッと声をかける。


「社長、おもいっきり目が据わってますよ」

「……気のせいだ」


確実に気のせいじゃないのに否定するから、加々美さんは呆れたように半笑いしていた。

加々美さんはなんとなく理由をわかっているっぽいけれど、私には謎だ。一体なにが気に食わなかったんだろう。

首をかしげるも、尚くんは一度咳払いをして、気を取り直したように次の用件を話し始める。


「冴木は実務経験があるから、さっそくチームに加わってもらいたいんだがいいか？」


その問いかけに、冴木さんはしっかりと頷き、「お願いします」と了承した。それを確認した尚くんは、資料を片手に仕事の割り振りを行っていく。
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