ママと秘密の赤ちゃんは、冷徹皇帝に溺愛されています
「イリス?」

ドクリと心臓が音を立てる。

まさか……どうして?

さっき、別れたはずなのに。彼は私とは反対方向に去って行ったのに。

恐る恐る振り返る。

そこにはレオンが居て信じられないといった顔で、私と腕の中のリラを見据えていた。

「どういうことだ? その子は……」

彼は動揺も露わに呟く。

声も出せない私は、無意識にリラを強く抱きしめていたようだ。

「ママ、いたいよ」

リラの声ではっとする。

「ご、ごめんね」

慌てて腕の力を解く。と同時にレオンが足早に近付いて来た。

「イリス、説明するんだ」

有無を言わせないレオンの声音。夜の闇の中、月の光を受けてリラの銀髪が淡く輝いている。

彼はもうリラの正体に気が付いたのかもしれない。

ただならぬ気配を感じ取ったのか、リラが不安そうな声を出し私に身体を寄せて来た。

「ママ、このひとだれ?」

「ママの……昔から知っている人。怖がらなくて大丈夫だからね」

私の言葉にレオンはむっとしたようだった。それでも子供の前だからか文句を言うことはなく、代わりに視線で説明を要求してきた。

もう……誤魔化すのは無理だ。

レオンがなぜここに居るのかは分からないけれど、リラの存在を知られてしまったのだから。
覚悟するしかない。

「説明するけど少し時間をください。リラに食事を用意しないといけないから。お風呂にも入れなくちゃ」

「……分かった。イリスの家はこの先なのか?」

頷くとレオンは自分も行くと言い出した。

断れるはずもなく、私達は三人で家に向かうことになった。

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