ママと秘密の赤ちゃんは、冷徹皇帝に溺愛されています
「イリス?」

レオンは意外そうに眉を上げる。

今の私の様子から拒否するとは思わなかったのかもしれない。

「ごめんなさい……私、どうしてもラヴァンディエにはいけないんです」

「……! だからどうしてなんだ? 今の環境が良くないと自分で認めただろう? 俺だったら最高の環境をリラに与えられる」

彼は苛立ったように声を荒げる。

「そうですけど……」

「リラは俺の娘でもある。父親としてこのままにはしておけない」

厳しい声だった。身体に恐怖が突き抜ける。

皇帝のレオンが決めたら私が逆らえるわけもない。出来るのは彼の心に訴えることだけだ。

「レオン様、お願いだからリラを連れていかないで! 私、リラと離されたら生きていけません」

「ふたりを引き離す気なんてない。ラヴァンディエにはイリスも一緒に帰るのだからな」

レオンは私も強い眼差しで見つめて言う。彼の瞳から私に対する強い感情を感じた。

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