ママと秘密の赤ちゃんは、冷徹皇帝に溺愛されています
リラの安全を願ってラヴァンディエから離れたはずなのに、成り行きとはいえこうやってレオンと共に戻って来てしまった。

病院に来ることが必要だったとしても、レオンの同行は断るべきだったのではないだろうか。
だけどあの時、私はレオンを拒否しなかった。

リラの病気の悪化で不安になり、彼を頼ってしまったのだ。

そのままずるずると行動を共にしていた為、リラはレオンに驚くくらい懐いていた。レオンもリラを大事にしてくれている。

レオンに抱っこをせがむリラと、それに応え力強く抱き上げるレオンを見ていると、引き離すことに罪悪感を覚える。

何よりも私自身がレオンを想っている。だから不安がありながらも彼を完全に拒否できないでいるのだ。

思い悩みながら、ふたりの少し後ろを歩いていると、リラの明るい声が聞こえて来た。

「ママ、おなかすいた!」

はっとして下げていた視線を上げれば、レオンに抱っこされたリラが元気よく手を振っていた。

どこから見ても仲良い親子だ。病気の陰もどこにも感じない。

そこには幸せな空気が漂っていた。

私は考えるのを一旦中断し、笑顔を浮かべて足早にふたりを追いかけた。

「もうお昼だね、どこかで休憩しようか?」

リラはニコニコとして頷く。

「うん、リラね、川をみながらごはんたべたいな」

都市カサンドラには、北から南に向けて大きな川が流れている。

町の人々の努力で美しさを保っている川は眺めもよく、観光客に人気の場所でもあった。

リラは大きな川自体を見たことがないから、特に興味が湧いているのかもしれない。

「川が見られそうな場所を探してみようか」

お昼ご飯は用意して来ているので、ベンチがある公園でも有ればいいのだけれど。

キョロキョロと辺りを見回していると、レオンに呼ばれた。

「イリス、こっちだ」

彼について行くと、広々とした公園に辿り着いた。

「向こうで休憩出来る」

レオンの指す方向には、緑の芝が広がっていて、ところどころに敷物を敷いて休憩している家族連れがいた。

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