ママと秘密の赤ちゃんは、冷徹皇帝に溺愛されています
しばらく新しいリボンを触っていたリラは、ふと思い出したように「おなかいた」と朝食を催促して来た。

「ちょっと待っててね」

私は台所に行き、食事の支度を始める。

野菜のスープと、パンと、チーズ。

最近はリラもいろいろ食べられるようになって来た。経済的に余裕がないので高価な食材は使えないけれど、出来る範囲で栄養のある食事を用意してあげたい。

愛情をたっぷりと込めた朝食を作り、リラと一緒に頂く。

「頂きます」

「いただきます……ママのごはんはいつもおいしーね」

笑顔の娘の姿を見ていると幸せを感じた。

「いっぱい食べてね」

この子を産んで三年。つい最近まで赤ちゃんだったのに、今はもう自分でスプーンを使ってご飯を食べられるようになった。

一生懸命にスプーンを運び食べる様子を見ていると満たされた気持になり、私は自然と目を細めた。

母娘ふたりの暮らしは慎ましいけれど平和で穏やかで愛情に溢れている。

昔を思い出して胸が痛むときはある。

今でも彼を忘れられない……けれど、きっとこれで良かったんだ。

あのとき私が選んだ別れは間違ってなんていない……今でもそう信じている。

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