まさお
すると、キッチンから顔をのぞかせた太一の母が加わる。
「ばってん、メダカランドに羊の銅像があるとね」
ジーパンにTシャツ、帽子を被った母親ももう出かける準備ができているようだ。
「おじいちゃんは、羊のおかげで商売も成功したし、おばあちゃんとも結婚して私らができて、あんたができたんや。」

ちょうど、ベルギーに渡った頃にメダカや金魚のブームがヨーロッパで起こり、まさおはそれで一財産を築いた。しばらくは、ベルギーで商売をしたが、太一の祖母(まさおの妻)が熊本に帰って子供を育てたいと言うので、お世話になったベルギーの国の人々に羊たちの羊毛と残りのメダカを寄付して帰国した。一階の客間には今でもベルギー大使館からの感謝状が飾ってあるし、向こうではまさおの名前はちょっと知られているらしい。

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